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『告示建築線』とは何ぞや?

『告示建築線』とは何ぞや?
著:誠和不動産販売  2021年10月更新

普段、私たちが何も気にせず目にし、歩む『道路』。
その道路は、不動産の世界においては、見る角度によって様々な顔を持つことが知られています。

 

公道と私道はわかりやすい例です。
公道は更に、

 

 国道 

国土交通省管轄(一部に都道府県・政令指定都市管轄も有り)

⇒ 国道は更に、『高速自動車国道』『一般国道(直轄国道)』『一般国道(補助国道)』に分かれます。

 

 都道府県道 

各都道府県管轄

⇒ 東京都道第311号線(環状八号線)・第4号線(青梅街道)など。

 

 市区町村道 

各市区町村管轄

⇒ 杉並区道など。

 

と分けることができます。

 

ちなみに、杉並区の栄え有る区道第1号は何処に在るか、ご存知ですか?
答えは、『杉並区役所東側の道路』です。青梅街道から分岐して、区役所の横を通って突き当りを右に曲がり、阿佐谷パールセンター商店街にぶつかるまで。この区間が杉並区道第1号線に指定されています。

 

他の見方では、建築基準法(以下、法)に依る区別があります。
法第42条(+43条)に種別が定められていて、

 

■ 1項1号:道路法に定める道路(国道や都道など)。基本的に幅員は4m以上有る。
■ 1項2号:開発により新設された道路。市街地開発で造られることが多い。
■ 1項3号:既存道路。法施行時に存在していた幅員4m以上の『私道』。
■ 1項4号:計画道路。今後新設が予定されているもので、1項1号になる前の道路。
■ 1項5号:私人が新たに設置する道路(その後公道になるケースも有る)。
■ 2項:法施行時に4m未満だったが建物が2軒以上建ち並んでいたもの。
■ 3項:土地や市街地の状況により幅員を4mとすることが困難な道路。歴史的な街並みを有する市街地や、
    斜面等物理的に拡幅が困難な地域に見られる。代表的なものとして、京都市衹園町や江ノ島、長崎市など。
■ 43条2項:4m以上の道路状の敷地(通路や水路敷)や、広大な空地。

※ 43条2項に該当する通路等に接する敷地では建築にあたって特別な許可を得る必要があり、そのような通路は一般的な『道路』
  とは扱われません。(通行する分には『道路』との違いは無い)

 

…と、列挙するとこのような感じでしょうか。

 

普段何気なく通る道路にも、これだけの違いがあります。
道路が色分けされたりわかりやすく表示が出ているわけではないものの、『これはどの種類の道路だろう?』と意識して見てみると面白いかもしれません。

 

さて、前置きが長くなりましたが、本日の主役は聞き慣れないこの言葉『告示建築線』です。

この言葉、耳にする機会は果たしてどれくらいあるのでしょうか。

 

聞き慣れないのも無理はありません。この告示建築線のルーツは、昭和25年に施行された建築基準法の前身となった『市街地建築物法(大正8年4月施行)』に端を発します。

市街地建築物法では、建築について次のように定められていました。

 

第七条:道路敷地ノ境界線ヲ以テ建築線トス 但シ特別ノ事由アルトキハ行政官廳ハ別ニ建築線ヲ指定スルコトヲ得
(意訳:)                                                
第八条:建築物ノ敷地ハ建築線ニ接セシムルコトヲ要ス 但シ特別ノ事由アル場合ニ於テ行政官廳ノ許可ヲ受ケタルトキハ此ノ限ニ在ラス
(意訳:)                                                          

 

第八条は、今日における建築基準法第43条1項の『接道義務』の原点でもあります。
建築線=道路境界線、というわけですね。
更に、第七条には『道路の境界線以外を建築線と指定することが出来る』とあります。
これこそが『告示建築線』と呼ばれるものの正体です。

 

行政官(帝都であった東京都内では警視総監(警察))は、『この線とこの線の間には建物を建ててはならない』と指定することが出来ました。この指定線は建築基準法が施行されるときに廃止されず、建築基準法附則第5項において『告示建築線間が4m以上のものは、その位置に法42条1項5号の指定があったものと見做される』と、そのまま残されています。
ちなみに、当時の度量衡は尺貫法ですから、その指定は尺で為されていることが多いようです。

 

よく見られるものは9尺(約2.72m)、生活幹線道路では18尺(約5.45m)のところもあります。
杉並区内でもよく見られる2項道路の中で、幅員が2.7mの道路があれば、それはいつかの昔に9尺で指定されていた告示建築線の名残かもしれません。余談ですが、2項道路の幅員は2.7m(9尺)の他に、3.6mのところも多く見ることができます。これはおそらく『2間』の名残でしょう。

 

9尺の方は幅員4m未満の為、建築基準法施行時に法42条2項に吸収されて消滅しました。
一方で、18尺のところは現に残っており、その告示建築線に接する敷地で建物を建築する場合は、道路を指定幅員まで拡幅(復元)する必要があります。

 

杉並区内では、主に成田東や浜田山・永福・高井戸・松庵など、主として区の南部において告示建築線を見ることができます。
逆に、市街地建築物法の時代には市街地では無かった(田畑の多かった)上井草や桃井・今川・善福寺などでは、ほとんど皆無と言って良い程です。
自宅の前の道は、もしかすると告示建築線かもしれない。興味を以って調べてみるのも面白い一幕となるでしょう。

 

遥か大正の頃の制度が、令和の今も脈々と根付いている。
100年も前と書くと古臭さも感じるかもしれません。然してそれは、私たちの住まう『街』というものが、そのルーツが未だ100年程度しか経過していないことを指し示すものでもあります。

 

私たちは、大正から昭和初期の時代を、白黒の写真(映像)でしか見ることができません。
しかし、その当時が白と黒しか存在しない時代であったかと言えばそれは否であり、私たちが普段何気なく見て歩く道路や道端の石杭、樹木の手触り、色は、遠い100年前の誰かも同じものを見ていたのだと思えば、遥かの昔を想起するには『視る』だけでその実叶うということでもあります。

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