「デジタル遺言(保管証書遺言)」について-民法改正- | 誠和不動産販売株式会社
「デジタル遺言(保管証書遺言)」について-民法改正-
著:金成 明洋 2026年9月更新
これまでの遺言制度は、自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で専門家が作成する「公正証書遺言」の2つが主流でしたが、 2026年6月、デジタル技術を活用した新しい遺言制度を盛り込んだ改正民法が成立しました。
今回は、この通称「デジタル遺言」についてポイントを分かりやすく解説します。
1.新しく変わる「デジタル遺言(保管証書遺言)」のメリット
法律上の正式名称は「保管証書遺言」といいます。主なメリットは以下の通りです。
これまでは本文も「手書き」が必須でしたが、キーボードや音声入力で作れるようになります。
紙の遺言書のような署名や押印の代わりに、デジタルデータ上で電子署名等を行います。
作成したデータは法務局のシステムに保管されるため、紛失や改ざん、家族に隠されてしまうリスクがありません。
わざわざ法務局の窓口に足を運ばなくても、自宅から手続きを完結できるようになる見込みです。
「手が震えて長文を書くのが難しい」「近くに法務局がない」という理由で遺言を諦めていた方にとって、大きな前進といえます。
2.「今すぐスマホで書いて保存」は無効
非常に便利な制度ですが、知っておくべき注意点が2つあります。
なりすましや強要を防ぐため、オンライン上で法務局による厳格な本人確認や、遺言内容の口述といった手続きが義務付けられる予定です。
法案は成立したものの、実際のシステム運用開始は 「2026年6月から3年以内(2028年度頃の見込み)」 とされています。
現時点ではまだこの方法を使うことはできません。
3.デジタル遺言(保管証書遺言)利用の流れ
- 1 スマホやパソコンで遺言書のデータ作成
- 2 保管を法務局にオンライン・郵送で申請
- 3 法務局担当官がWeb会議や対面で本人確認
- 4 遺言者は全文読み上げて真意に基づく内容である事を確認
- 5 法務局が遺言書を保管していることを本人が指定した者に通知
4.「今、遺言書を用意したい人」はどうすべき?
体調に不安があるなど、今すぐ遺言書を用意したい方は、 新しい制度を待たずに従来の「自筆証書遺言」や「公正証書遺言」を利用すべきです。 まずは今、確実な方法で遺言書を作っておき、将来デジタル遺言の運用が本格的に始まったタイミングで、必要に応じてデジタルで書き直すのが一番賢い進め方です。
5.従来の制度との比較表
| 比較項目 | デジタル遺言 (保管証書遺言) |
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 (専門家作成) |
|---|---|---|---|
| 作成方法 | PC・スマホで作成 | 原則手書き | 公証人が作成 |
| デジタル化 | 未定 | -(※1) | 2025年10月より開始されている |
| 押印 | 不要 | 廃止予定(署名のみ) | 紙:必要(公証人の前で押印) デジタル:不要(電子署名で完結) |
| 裁判所での「検認」 | 不要 | 必要 (保管制度の場合は不要) |
不要 |
| 費用 | 未定(※2) | 無料 (保管制度は3,900円) |
数万円~ (財産額による) |
| 安全性 | 法務局で保管 | 紛失・形式不備のリスクあり (保管制度を利用した場合は法務局で保管) |
公証役場で保管 内容の有効性は担保される |
※2 現時点では未定ですが、現在法務局が行っている「紙の遺言の保管」が1件3,900円ですので、それと同程度の水準になる可能性があります。
6.まとめ
デジタル化によって遺言書作成の「手続き」は圧倒的に楽になります。しかし、いくら手軽になっても 「誰にどの財産を遺すか」という内容の正当性までは、法務局はチェックしてくれません。
せっかく残した遺言が原因で家族が揉めてしまうことがないよう、内容に少しでも不安がある場合は、事前に専門家に相談しながら作成することをおすすめします。
デジタルという新しい波を上手に取り入れながら、大切な家族へ確実な想いを届ける準備を始めてみてはいかがでしょうか?




