民法改正によって変化する「瑕疵担保責任」:買主編 | 誠和不動産販売株式会社

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民法改正によって変化する「瑕疵担保責任」:買主編

民法改正によって変化する「瑕疵担保責任」:買主編
著:誠和不動産販売  2018年4月更新



2017年5月26日に改正民法が成立し、制定以来約120年ぶりに債権の抜本的な見直しがなされることとなりました。
新しい民法の施行は2020年4月1日からとなっていますが、この改正が不動産の分野にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

現行法においては瑕疵担保責任とは、売買において目的物に数量不足や買主が気付かなかった「隠れた瑕疵」がある場合、代金減額請求や損害賠償請求・契約解除を認めるものでした。この瑕疵担保責任は従来、特定の物の個性に着目して取引する場合(特定物)に限って適用されてきました。

特定物とは、代替の効かない商品のことを指し、不動産は特定物に属します。特定物売買における売主の義務は、その目的物の所有権を買主に移転することに尽きるとされていたため、たとえその目的物に欠陥があったとしても売主は欠陥の無いものを引き渡す義務はなく、債務不履行責任は生じないという考え方がありました。
この特定物か、あるいは不特定物かによって買主が保護される範囲が異なる点が現行民法の問題点とされ、このような事態の是正に向けて改正民法では「契約不適合責任」という制度が導入されることになりました。

契約不適合責任はこれまでの「隠れた瑕疵」に代わり、目的物が「契約の内容に適合しないものである状態」、すなわち実際に給付された目的物と契約の内容に齟齬がある場合に売主が負う責任です。この責任は、取引の目的物が特定物か不特定物であるかを問いません。

ここで問題となる契約の内容とは「合意の内容や契約書の記載内容だけでなく、契約の性質(有償か無償かを含む)、当事者が契約をした目的、契約締結に至る経緯を始めとする契約をめぐる一切の事情に基づき、取引通念を考慮して評価判断されるべきものである」とされています(「民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明」(平成25年7月4日補訂)より)。
不動産においては、これまでも瑕疵にあたるかが争点となってきた地中埋設物や地盤、インフラ設備、都市計画あるいは日照や騒音等の周辺環境は、その項目が契約の内容となっているにも関わらず対象物の状況が違っていた場合には「契約不適合」に当たり得ると考えられます。

つまり、今後は瑕疵があるかどうかではなく、その取引の目的物が契約内容に沿ったものであるのかどうかが重要なポイントとなってきます。買主の立場においては、自身が何をしたいのか、どのような目的で契約に至るのかを事細かに契約に明記することで、もしも目的物が契約にそぐわないものであった場合でも、売主の責任を追及することが出来るようになります。
また、従来瑕疵担保責任では、目的物に欠陥があった場合①損害賠償の請求、もしくは②契約解除の2つしか選択肢がありませんでした。今回の改正により、瑕疵担保責任に代わる契約不適合責任においては、更に③追完補修、④代金減額の2つが請求できるようになりました。

追完補修とは、その目的物が契約内容に適合しなかった際に、履行不可能な場合を除いて代替品または不足分の引渡し、または補修を請求することが出来ることです。履行の方法が複数ある場合、買主にその選択権があるとされていますが、買主に特段の負担を課すものではないときは、売主は異なる手段での補完を行うことが認められています。
また、買主が補修の請求を求めたにも関わらず売主がそれに応じないとき、買主は目的物の不適合の程度に応じて代金の減額を請求することが新たに認められることとなりました。

現行民法下では、瑕疵担保責任に基づく損害賠償等の請求には、瑕疵を知ってから1年以内という期間制限がありましたが、契約不適合責任においては同じく1年以内に売主に対して「通知」することで済むとされています。これまで、瑕疵の内容を具体的に明らかにし損害賠償請求の根拠を示す必要のあった瑕疵担保責任と比べると、契約不適合責任の追求は通知で足りるために買主の立場がより保護されるようになったと言えます。

しかしながら、改正民法下においても「契約の内容」は必ずしも明確ではないためその解釈を巡って争いになる事態が予想される他、裁判所が従来の「瑕疵」とは違った解釈を示す可能性も考えられます。
双方にとって無益な紛争を防止し不測の損害を避けるためには、売買契約において目的や動機、契約締結に至るまでの経緯を出来るだけ明確にすることが重要となるでしょう。

何のために購入するのか、何を目的としているのか、何があること(ないこと)が条件なのか、特に問題が生じやすい土地の売買の場合にはそこまで明確にしておく必要もあるかもしれません。今後は契約不適合責任が法制化されたことで、土地取引では不動産業者のより詳細な調査や契約内容の確認、中古住宅の分野ではホームインスペクションの実施、既存住宅瑕疵保険などの普及によって、不動産売買における買主(消費者)の保護がより図られていくこととなります。

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